【危ないブロック塀の見分け方 】大阪地震の悲劇をくりかえさないために

エクステリア&ガーデンデザイナーふじさき かなこです。

大阪地震で9歳の女の子が学校のプールのブロック塀の倒壊にまきこまれて亡くなるという痛ましい事故がありました。まだ幼い命であること、学校という一番安全でなければいけない施設での事故ということで世間の関心を集めています。

私も同じ年頃の子供を持つ親として、亡くなったお子さん、ご家族の皆さんの気持ちを思うとやりきれない気持ちです。

なぜプールの壁が倒れたのか

当初「プールの壁にはさまれて」と報道されていました。どんな状況なのかと不思議に思っていましたが、現場の映像を見てよくわかりました。こちらがニュースの映像です。

(フジテレビの映像です。)

RC(鉄筋コンクリート)の土留めの上に設置されたブロック塀が、ぽっきりと折れて道路側に倒れています。この下敷きになったのです。

なぜこんな倒れ方をするのか。おそらくRC土留めとブロック塀をつなぐ鉄筋が短かったことが原因です。本来であれば下のRCと上のブロック塀は鉄筋で一体化されていなければならないのですが、短い挿し筋でつながれていただけと思われます。簡単な図で書くとこうなります。赤い線が鉄筋です。

土留めRCの上にブロック塀を造る場合は、鉄筋で一体化させるために同時に施工する必要があります。

ですが今回の事故現場の塀は25年前に付け足されたものとのことでしたので、このような構造になっていると考えて間違いないです。上のブロック塀には鉄筋が入っていたためつなぎ目が折れて丸ごと倒れました。いくらブロック塀をきちんと施工しても、基礎と一体化になっていなければ意味がありません。

アップの写真を見るとそれが良くわかります。ブロック塀の断面に黒い棒が数本出ているのがわかります。これが下のRCとつないでいた挿し筋です。こんな短い鉄筋で支えきれるわけがありません。

また、ブロックを8段もつんでいるのに控え壁(後で解説します)の存在も見つけられません。18日夜のニュースで建築基準法違反であることが発表されました。

なぜ建築基準法違反のブロック塀が小学校という公共施設に設置されているのでしょうか。

ブロック塀には建築基準法で定められた規定があります。ただしこれを守らせる仕組みがないのです。ブロック塀は資格がなくても設計・施工できますし、役所への申請も必要ありません。悪意で手抜き工事をする場合だけでなく、知識の不足からこのような塀を造ってしまうケースもよくあります。

何十年もブロック塀は危ないと言われているのに実行性のある対策が取られてこなかったことは問題です。これ以上ブロック塀倒壊による悲しい事故を起こさないために、罰則付きの規制や確認申請など仕組みの整備を望みます。

危ないブロック塀の見分け方

危ないブロック塀を造らないことが一番大事ですが、危険な塀がすでに多く存在していることも事実。自分の身を守るため、危ないブロック塀の見分け方を覚えてください。次のような特徴があるブロック塀を見つけたら、近づかないでください。また、ご自宅にこのようなブロック塀がある場合は対策をお願いします。

古いブロック塀

ブロックの耐用年数は10~15年と考えられています。(構造上の見地より)

ブロックの耐用年数は30年程度と考えられています。(当たっていた資料が古かったので訂正しました。)街を歩くと明らかに30年以上経っているブロック塀はそこらじゅうにありますよね。古いブロック塀は劣化し、もろくなっている可能性が高いです。

控え壁のないブロック塀

高さ1.2m(ブロック6段)を超える壁には控え壁を設置しなければなりません(例外はあります)。控え壁とは次の絵のように、塀に交差して支える壁のことです。

端部から0.8m以内に設置、3.4mごとに一箇所必要です。もちろん基礎、ブロック塀と鉄筋で一体化されていることが必要です。

7段以上のブロック塀でこの控え壁がないものは、少しの揺れでも倒壊する危険が高いです。大阪の事故があった塀にも控え壁はありませんでした。

すかしブロックが多いブロック塀

すかしブロックとはこの写真のような穴あきブロックのことです。古い塀によく見られますね。

このすかしブロックが多く入っているブロック塀は危険です。

特に次のような配置になっていたら注意してください。

  • 最上段に入っている
  • 最下段に入っている
  • 横に連続している
  • 縦に連続している
  • 斜めに連続している

この写真は最上段に入っているのでアウトです。

そしてそもそも、このすかしブロックが入っている塀は相当古いことが予想されます。 すかしブロックを見たら、危ない塀と思う、でよいでしょう。

新しい塀でも、ガラスブロックや穴あきブロックを多用している壁には注意してください。

※この規定は日本建築学会著「壁式構造関係設計基準集・同解説」(メーソンリー編)によるものです。

構造物の上に積まれたブロック塀

大阪の事故でも、基礎のRCとブロック塀が適切につながっていなかったことから倒壊しました。構造物の上に積まれたブロック塀が全て危険とは限りませんが、見た目では危険か安全かの判断ができません。次の絵のように、構造物の上に積まれたブロック塀があったら近寄らないようにしてください。

RC土留めの上に積まれたブロック塀(レンガ等も同様です。)

 

石積みの上に積まれたブロック塀

大谷石積みの上に積まれたブロック塀

特に下の構造物が古く、上のブロック塀が新しい場合、後から付け足された可能性が高く危険です。

子供と近所の危ないブロック塀を確認しましょう

街には危ないブロック塀があふれていることがわかっていただけたと思います。お子さんがいらっしゃる方はぜひ、一緒に近所をまわって近づいてはいけない場所を確認してください。

実は私の子供が通っている学校のプールにも、大阪の事故と全く同じようなブロック塀がありました。私はこの塀の下は絶対に歩かないように子供に言い聞かせていました。幸い今年改修工事があり、安全な目隠しに取り替えられたのでほっとしているところです。

大阪の事故はたまたまではありません。このようなブロック塀は日本のあちこちにあるということを忘れないでください。そして自宅に危ない塀がある方は、できるだけ早くリフォーム工事をお願いします。もう悲しいニュースを見たくありません。切にお願いします。

無料ブロック塀写真診断をやっています。ご自宅や近所に気になる塀がある方はお気軽にお申し込みください。

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