こんにちは。エクステリア&ガーデンデザイナーふじさき かなこです。
私は仕事柄、ガーデンショーを観にいくことが多いのですが、ついにずっと行ってみたかったハウステンボスの「世界フラワー・ガーデンショー」に訪れることができました。チェルシーフラワーショーでも多数のゴールドメダルを受賞されている石原和幸氏の作品はじめ、たいへんレベルの高いショーでした。
本記事ではショーガーデン9作品とローラン・ボーニッシュ氏の空間装飾をご紹介します。
Contents
世界フラワー・ガーデンショーとは
世界フラワー・ガーデンショーとは長崎のテーマパーク「ハウステンボス」内で毎年行われているガーデンショーで2018年で7回目になります。
国内外の大会で様々な受賞暦を持つ、国内トップレベルのガーデナーたちが100㎡以上の圧巻のショーガーデンを築きます。メインのショーガーデン8作品、10㎡程度のテラスガーデン10作品、コンテナガーデンやハンギングバスケットが50作品展示されています。
また、フラワー部門では世界トップクラスのアーティストが集結。空間デザイン13作品を楽しむことができます。
世界フラワー・ガーデンショーは、世界的に有名なガーデンデザイナー石原和幸氏の提案で始まったそうです。石原氏と言えば長崎出身。地元を盛り上げたいというお気持ちだったのでしょうね。もちろん7年連続出展されていて、毎回すばらしい作品を発表されています。
2018年 開催概要
<会場:パレスハウステンボス>
ガーデンショー 2018年9月29日(土)~2018年11月4日(日)
花の世界大会 2018年10月13日(土)~2018年11月4日(日)
ハウステンボスパスポートの他、500円の入場料が必要です。
ガーデンショーはパークの一番奥にあるパレスハウステンボス内で開催されています。ハウステンボスは日本一広大なテーマパークで(ディズニーランドの約3倍)、入場ゲートからパレスハウステンボスまではなんと徒歩で30分もかかります!!
パークバスやカートタクシー、レンタサイクルが用意されていますので、歩くのがたいへんな方は利用するといいでしょう。私は歩きましたが、パーク内はとても綺麗なので景色を楽しみながら行けばそれほど苦になりませんでしたよ。
また世界フラワー・ガーデンショーで特筆すべきことが3つあります。
- ガーデン内を歩いて観る事ができる
- 会期が長い
- 夜景が楽しめる
ショーガーデンは外から見るだけの事が一般的ですが、このガーデンショーではガーデン内を歩いて楽しむことができます。これは本当にすごいこと。ガーデンデザイナーの意図をより感じる事ができると思います。
また会期が長い事も珍しいです。国際バラとガーデニングショーなどでは会期は1週間程度。そのため植物は実際に植えつけるのではなく、ポットのまま並べられていたりします。この世界フラワー・ガーデンショーでは1ヶ月以上の会期であり、外での展示ということで実際に地植えされた植物を見ることができます。そのためご自宅のガーデンの参考にしやすくなっています。
どのガーデンも夜景が楽しめるようにライティングが工夫されています。昼景と夜景が楽しめるショーはなかなかないですね。
ショーガーデン8作品紹介
ではいよいよ、ショーガーデン8作品の紹介です。
「花の楽園」石原 和幸
まずは石原和幸氏の作品です。
コンセプト
花に囲まれていると心が豊かになる。その感動をたくさんの人に伝えていただきたい。花があるところでは争うこともなく優しい気持ちになれる。日本中、世界中に花いっぱいの空間を広めて世界を平和にしたい。
石原氏と言えば「苔の魔術師」の異名をとる、和の侘び寂びの世界観で有名な方。今回の作品はその苔を使わず、しかもシンメトリーなデザインです。白を基調とした枠組みの中に、植物が完璧に入れ込まれていました。さすがのクオリティ、洗練度です。
よく見ていくとこのように和の植物が違和感なく入れ込まれています。
マニアックなんですが、このライトがガーデンにぴったりだったので撮影した1枚。白い清潔感のあるガーデンにクリアなガラスライトがマッチしています。細かいところまで世界観が統一されていますね。
A LITTELE JOURNEY チェ・ジェヒョク&キム・ウォンヒ
次は韓国のデザイナーチーム。STUDIO OPENNESS Elly Green and Plantsのチェ・ジェヒョク氏&キム・ウォンヒ氏の作品です。韓国民国環境造園大戦大賞、三星エバーランド国際造園デザインコンペ3等など、韓国で受賞暦多数のデザイナーです。
コンセプト
The garden、「Little Journey」は人生で出会うための短くて楽しい旅の瞬間を示しています。庭園はテーマの異なる3つの小さな庭園で構成されています。狭い通路がこれらの庭を通ります。花、水、小石は絶えず変化する光と反応し、様々な雰囲気を作り出します。
韓国のデザイナーチームですが、植物や石・砂利などは日本で調達されたそうです。それもカタログから選ぶのではなく実際に現地まで足を運ばれたそうです。自然なカラーの砂利、石づかいがナチュラルな雰囲気を醸し出しています。本当に日本にある一ガーデン、という自然な雰囲気ですよね。
たまたまキム氏が会場にいらしたのでお話を伺うことができました。所々に配置されたオブジェは植物のカラーに合わせて塗っているそうです。確かに絶妙にカラーがマッチしていますよね。
砂利は川まで業者さんと取りに行ったとの事。綺麗な形・色のものではなくて、できるだけ自然なものを手にいれるのに苦心されたそうです。この砂利をショーガーデンに持ってくるか!というのがとても新鮮でした。
また、日本で植物を調達した感想も伺いました。種類は韓国とそれほど変わらないそうですが、質がよい事に驚かれたそうです。どれもとても元気で、花の発色も良かったので選ぶのが楽しかったそう。ただ、予定していたより背が高い植物を調達することができなかったので、背の低いガーデンに造り替えたとおっしゃっていました。臨機応変さもガーデナーに求められるスキルのひとつですね。
個人的に、砂利や植物のシックなカラー使いと直線的な造形のコントラストがとても気に入った作品です。(余談ですが、キム氏は日本語がとてもお上手でした。)
「森の中の花いっぱいのお庭」 山口 繁樹
次は山口造園の山口繁樹氏の作品です。山口造園はもともとは日本庭園を得意とする会社ですが、こうしたショーガーデンやモルタル造形でも有名です。
コンセプト
誰もが、一度見かけたら立ち寄って中に入ってみたいと思ってもらえる庭を造ってみました。二階建てのハウスはモルタル造形工法で製作し、小さなパーティが出きるようにしております。もう一棟は木を主体に製作し、物作りや色々な事ができる部屋として利用できます。
こちらのガーデンは見所がたくさんあって、中を歩いて回るのがとても楽しかったです。モルタル造形で作られた小屋はメインの小屋を山口氏が、二階建ての小屋を息子さんが、奥の小屋をお弟子さんが造作されたそう。ひとつのガーデンの中にもそんな物語があります。
細かいブリキのオブジェなど、見逃せない仕掛けがたくさんありました。ぜひ、実物をご覧いただきたい。
花いっぱいのPatio(パティオ) 深見 誠一
次は株式会社緑化園の深見誠一氏の作品。にぎやかでカラフルなガーデンに心が楽しくなります。
コンセプト
花に誘われて入口を入れば花いっぱいの空間が広がります。ひときわ目を引くのが壁いっぱいに植えられた立体花壇。花に囲まれながら進む小道をお楽しみください。
このガーデンはとにかくカラフル!赤や黄色の華やかのカラーがふんだんに使われていて、見ていて楽しくなるガーデンです。
そして360度どこから眺めても美しいのがポイント。正面からガーデンに入り、アーチをくぐると違う世界が広がっています。ひとつのガーデンで色々な表情が楽しめる、そして統一感もあるとても勉強になる作品でした。
「花と空色」岩永 邦夫
次は株式会社岩永造園の岩永邦夫氏の作品です。
コンセプト
花を眺めながら、飛び石を上がって行くと、憩の空間があります。太陽位置で、アクリル越しの床は色を変えていきます。太陽が沈み、夜になると花と空色を貯えた5角形の光のオブジェに明かりが灯ります。
こちらのガーデンは「長崎」を意識した作品。キリスト教のモチーフや五島列島からインスパイアされたオブジェ。そんなこだわりが散りばめられています。
造形はダイナミックで、植物もゾーンに分けて群植されています。その潔さがパワフルで美しい。ライティングにもこだわっているそうなので夜も観てみたい作品です。
花道-hana michi- 安達 寿枝子
次は株式会社フロルの安達寿枝子氏の作品です。今回唯一の女性デザイナーで、繊細な感性が光ります。(韓国チームは男性と女性のペアでした。)
コンセプト
花より_ ここに来てくれてとてもうれしい ゆっくり歩いて、こころゆくまで楽しんで♪ そして、ゆっくり振り返ってみて あなたの あゆんできた 花道を _あなたへ
女性らしいやわらかな曲線と繊細な草花がとても印象的でした。
そして見逃せないのが小物づかいの可愛らしさ。ガーデン好きの方の参考になりそうなものがいっぱいでした。
神社におまいりする猫。なんと神様はまたたびなんですって。かわいい~。
猫の足跡が施された枕木。中には発光するガラス砂利が仕込まれていて夜には輝きます。
花や蝶のモチーフが所々に隠されています。これホームセンターで切り出したんだそうですよ!
安達さんともお話することができ、ガーデンの工夫などたくさん伺ってきました。それはまた別の記事で詳しくまとめたいと思います。
「秋草や、兵ども夢の跡」日本造園組合連合会青年部
次は一般社団法人 日本造園組合連合会青年部の作品です。今回のガーデンショーで唯一の日本庭園をベースにした作品。
コンセプト
かつての栄華を誇った、戦国時代のとある山城。あれから数百年が経ち、石垣の一部は崩れ、建物は朽ち果て、周囲には竹林や木々が生い茂る。しかしながら、自然に放置されたその場所は、季節の花々が咲き、美しい景観を見せる空間となった。
江戸から明治に移り変わる時代をイメージして作庭された作品とのことです。極力華やかさを抑えた江戸時代から、文化が花開く明治時代のコントラストが面白い。
また、随所に日本庭園の伝統技法が盛り込まれていてディティールが面白いです。
地震で崩れた熊本城の石積みですが、この野積み技法で積まれた部分は崩れなかったそう。昔からの技法は強いですね。
壁の中央が膨らんでいるのがわかりますか?これは矢が突き抜けてこないように、膨らませているんだそうです。戦国時代の技法です。面白いですね~。
My Private Sanctuary ~私の大切な場所~ 山下 武夫
最後に株式会社朝長緑化建設の山下武夫氏の作品です。山下氏はショーガーデンだけでなく、ハウステンボスの植栽管理も担当されているそう。今回のガーデンもハウステンボスの鈴かけの木を借景に使った、まわりと調和する作品です。
コンセプト
ここは北欧の田舎。少女は針葉樹に囲まれたサイロの小さな窓から見える景色が大好きでした。大人になった少女はこの景色を守る為、サイロを保存して、花を育て、庭をつくり、時にアトリエとして使い、絵を描くのを楽しみにしています。彼女はこの景色をひとり占めしたくて「小さな扉」をつけました。
このお庭は山下氏の子供時代の情景を重ねた作品とのこと。氏の愛が伝わってくる素敵な作品だと思います。
キッズガーデン 杉島 善実
最後に有限会社花かごの杉島善実氏の作品です。ほかのガーデンとは違い、小さな子供に楽しんでもらうための遊び心いっぱいのガーデンがコンセプト。
カラフルなガーデンで楽しく遊ぶ子供達の姿、見てみたいですね。
ガーデンツアーに参加しよう
ショーガーデン9作品、ただ観るだけでも楽しいですが、ガーデンツアーに参加するとお庭のコンセプトや裏話が聞けてさらに楽しめます。
こちらはハウステンボススタッフの方によるガーデンツアーの様子。30分ほどかけてガーデンの見所を説明していただきます。
説明してくださるのはハウステンボス全体の植栽スタッフ。今回のショーガーデンのほか、パークの植物についても質問することができますよ。とてもおススメです。
その他、作品を出展されているデザイナーによるツアーや、石原和幸氏のトーク&ライブショー、フラワーアーティストによるデモンストレーションなどたくさんのイベントが企画されています。
世界フラワー・ガーデンショーに行ったら、こうしたツアーも組合わせてガーデンを楽しみつくしてみてください。
ローラン・ボッシュ氏の先行展示
ガーデンを堪能したら、ぜひ「パレスハウステンボス」にも入ってみましょう。このパレスはオランダの王宮を再現した建物で、とにかく豪華!!!バブルの頃に建築されたものなので、お金のかけ方が半端ないです。
私は花の世界大会(10月13日~)に先駆け、ローラン・ボーニッシュ氏の先行展示を観てきました。
こちらは2Fホワイエにあるシンプリシティとラグジュアリー。白樺に囲まれた空間に、蘭の花が咲き誇っています。
こちらは壁画の間にある「秋へのいざない」。作品もすごいんですけど、この壁画の間……。 なんなんですかね、このゴージャスな部屋。床は一面にモザイクタイルが敷き詰められ、壁は全て手書きの絵画で装飾されています。すごいですよ、この部屋。バブルって、バブルってすごい。
パレスハウステンボスでは絵画展も開催されています。私が訪れた時はだまし絵で有名なエッシャー展でした。エッシャーの絵画もすばらしかったです。これ、東京で絵画展やったら人がたくさん来るんじゃないかしら。台風直前のハウステンボスはガラガラでしたので、ゆっくりと鑑賞することができました。
パレスハウステンボスの中庭も素敵です。観るのを忘れないでくださいね!夜にはライティングが見事だそう。もう一度訪れてみたいです。
ハウステンボス 世界フラワー・ガーデンショーへ行ってみよう
見ごたえ十分な世界フラワー・ガーデンショーの紹介でした。訪れたのは2018年9月29日。ガーデンショーの初日です。10月13日からは花の世界大会も始まり、ガーデンショーと同時に楽しむことができます。お花好きな方にはたまらないイベントになること間違いなしですよ。
ハウステンボスでは世界フラワー・ガーデンショーのほか、楽しいイベントが満載です。ガーデン、建築好きな方は楽しめること間違いなしですし、子供向けのアトラクションやワイン・ビール祭り、ホテルの豪華ランチなど美食も充実。
どんな世代の人が行っても楽しめるテーマパークになっています。秋の行楽、ハウステンボスに足を運んでみませんか?
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